しあわせカタチ図鑑

働き方を変えるプログラミング:会社員からフリーランスエンジニアへ転身した軌跡

Tags: プログラミング, フリーランス, エンジニア, キャリアチェンジ, 働き方

はじめに:多様な働き方としてのフリーランスエンジニア

現代において、キャリアの選択肢は以前にも増して多様化しています。会社員として組織に属する働き方だけではなく、自身のスキルや経験を活かし、独立して活動する道を選ぶ人も少なくありません。特にIT分野、中でもプログラミングスキルを持つフリーランスエンジニアは、場所や時間に縛られない柔軟な働き方を実現できる可能性から、注目を集めています。

この記事では、会社員として働きながらプログラミングスキルを習得し、最終的にフリーランスエンジニアとして独立した一人の人物の軌跡をご紹介します。なぜその道を選び、どのような壁にぶつかり、それをどのように乗り越えてきたのか。そのリアルな体験談から、読者の皆様にとっての新しい働き方や幸せのカタチを探るヒントが見つかるかもしれません。

会社員時代の模索とプログラミングとの出会い

今回お話を伺ったのは、都内のIT企業で約10年間会社員として勤務した後、フリーランスエンジニアとして独立した山田さん(仮名)です。山田さんは、会社員としての仕事に大きな不満があったわけではないと言います。しかし、日々の業務をこなす中で、自分のスキルが特定の組織内でしか通用しないこと、そして自身の時間や働く場所を自分でコントロールできないことに、漠然とした閉塞感を感じ始めていたそうです。

「与えられた仕事をこなす日々の中で、自分自身の市場価値を高めたい、そしてもっと自由な働き方がしてみたいと考えるようになりました。何か新しいスキルを身につけたいと思ったとき、時代の流れや将来性を考え、プログラミングに興味を持ったのです。」

山田さんは、まずは独学でオンラインの学習プラットフォームを利用してプログラミングの基礎学習を開始しました。会社からの帰宅後や週末の時間を活用し、地道に学習を進めたと言います。

スキル習得から最初の仕事獲得まで

学習を進める中で、山田さんは次第にプログラミングの面白さにのめり込んでいきました。しかし、独学の難しさも同時に痛感したそうです。

「エラーが解決できなかったり、次に何を学べば良いか分からなくなったり、正直心が折れそうになることもありました。会社で疲れて帰ってきてからコードを書くのは、体力的に厳しい日も多かったです。」

山田さんは独学に行き詰まりを感じた頃、プログラミングスクールに通うことを決意しました。体系的なカリキュラムと講師に質問できる環境が、学習効率を大きく向上させたと言います。スクール卒業後も、積極的に技術系の勉強会に参加したり、自身のポートフォリオとなるWebアプリケーションを開発したりと、継続的なスキルアップに努めました。

最初のフリーランスとしての仕事は、知人の紹介だったそうです。小さなWebサイト制作の案件でしたが、会社員としての仕事と並行して、初めて顧客から報酬を得る経験は、大きな自信に繋がったと言います。その後、クラウドソーシングサイトなどを活用し、徐々に実績を積み重ねていきました。

独立後の現実:困難と試行錯誤

会社員としての収入とフリーランスとしての収入が両立できるようになった頃、山田さんは独立を決意しました。しかし、独立後の道のりは決して平坦ではなかったと言います。

「会社員時代は毎月決まった額の給与がありましたが、フリーランスになると収入の波が激しいことを痛感しました。案件が途切れたり、想定より作業に時間がかかったりすると、その月の収入が激減することもあります。経済的な不安は、独立後しばらくの間、常に頭の中にありました。」

また、一人で仕事をする上での孤独感や、全ての責任を自分で負うことの重圧も感じたそうです。仕事の獲得から納品、請求書作成まで、業務以外の様々なタスクもこなさなければなりません。

これらの困難に対し、山田さんはいくつかの対策を取りました。収入の波に対しては、複数のクライアントと継続的な契約を結ぶこと、そして一定の貯蓄を持つことで精神的な余裕を保つようにしました。孤独感については、フリーランスが集まるコワーキングスペースを利用したり、オンラインコミュニティで他のエンジニアと交流したりすることで解消していったそうです。

自己管理については、毎日のルーティンを決め、タスク管理ツールを導入するなど、効率的に作業を進める工夫を凝らしました。また、新しい技術の習得や情報収集を怠らないことも、フリーランスとして生き残る上で不可欠だと語っています。

働き方と生活の変化、そして見つけた幸せ

フリーランスエンジニアとして数年が経ち、山田さんの働き方と生活は大きく変化しました。働く場所は自宅やカフェ、コワーキングスペースなど、その日の気分や状況に合わせて選べるようになりました。時間も比較的自由にコントロールできるため、平日の昼間に趣味の時間を楽しんだり、家族との時間を大切にしたりすることも可能になったと言います。

収入についても、波はあるものの、会社員時代と比較して大幅に向上した月も少なくありません。ただし、これは常に新しいスキルを学び続け、自身の価値を高め続ける努力があってこそだと、山田さんは強調します。

「働く時間や場所を自分で選べるようになったことで、生活の質が格段に上がったと感じています。満員電車に乗るストレスもなくなりましたし、体調に合わせて柔軟に働けるのは大きなメリットです。収入の不安定さはゼロではありませんが、それ以上に、自分の技術で直接的に人の役に立ち、感謝されることにやりがいを感じています。」

経済的な側面では、会社員時代の給与という「安定」を手放した代わりに、自身のスキルと努力が直接収入に繋がるという「可能性」を手に入れたと言えます。また、経費計上など、税務に関する知識も必要になりましたが、それはビジネスオーナーとしての新たな学びでもあったそうです。

人間関係については、会社という特定の組織に限定されず、様々なクライアントや同業のフリーランスとの繋がりが広がり、刺激的な日々を送っていると言います。

まとめ:自分らしい「幸せ」をデザインする

山田さんの事例は、会社員という働き方から、自身のスキルを磨き、フリーランスとして独立するという選択肢があることを示しています。その過程には、困難や不安も伴いますが、それを乗り越えるための具体的な行動や工夫が存在します。

この事例から学べることは、一つには「継続的なスキル習得の重要性」です。変化の速いIT業界で活躍し続けるためには、常に学び続ける姿勢が不可欠です。二つ目には「リスクと向き合い、乗り越えるための準備」です。フリーランスとしての不安定さに対し、経済的・精神的な備えをすることで、困難を乗り越える力が養われます。そして三つ目には「自分にとって何が大切か」という価値観への問い直しです。山田さんは、時間や場所の自由、そして自身のスキルで直接貢献することに価値を見出し、それがフリーランスという働き方を選んだ原動力となりました。

幸せのカタチは人それぞれです。会社員として組織の中で成長することに幸せを感じる人もいれば、山田さんのように自身のスキルで独立し、自由な働き方の中で幸せを見出す人もいます。キャリアに迷いや閉塞感を感じたとき、このような多様な生き方の事例を知ることが、自分にとっての「しあわせカタチ」をデザインするためのヒントになるのではないでしょうか。

重要なのは、自身の内なる声に耳を傾け、どのような働き方や生き方が自分にとって心地よいのかを探求し続けることかもしれません。その探求の過程で、この記事がささやかな一助となれば幸いです。